在宅酸素療法(HOT)を行う際、医師はもちろん、リハビリ担当者も重要な役割を求められます。リハビリ担当者が気を付けるべきポイントを紹介します。
在宅酸素療法は、体内に酸素を上手く取り入れられないときに在宅で酸素吸入行う療法です。「Home Oxygen Therapy」を略して「HOT(ホット)」と呼ばれています。肺炎や慢性閉塞性肺疾患の患者さんは、退院前に一時的に酸素投与しながら運動することもありますが、呼吸機能が元通りに改善しないまま退院した場合には在宅酸素療法を導入することになります。また、慢性心不全による睡眠時無呼吸も在宅酸素療法を導入するケースのひとつです。
こうした条件が合致して、医師が在宅酸素療法の適応と判断した場合に導入することになります。時間内歩行試験による酸素飽和度や呼吸数の変化、歩行距離の記憶などをもとに運動時の低酸素評価を実施。歩行能力の評価は、理学療法士が実施することもあります。
患者さんに呼吸苦の自覚症状がない場合は特に、自己判断で中断しないように説明することが大切です。管が邪魔になるトイレや歯磨きなど短時間の動作時に、大丈夫だと自己判断して外してしまう患者さんは少なくありません。「息苦しくない」からといって酸素が十分とは限らないことを丁寧に説明しておきましょう。低酸素状態が続いた場合のリスクも説明してください。
自己判断しないためには、パルスオキシメーターで酸素飽和度のチェックをすることも大切です。退院後の生活において、呼吸状態は必ずしも一定ではありません。季節の変わり目や体調不良の際などは、設定した酸素量の調整が必要なこともあります。ただし、自分で流量を変更してはいけません。指先の体温や爪の状態などによって、正しい数値が出ないことがあるからです。数値に異常があれば、かかりつけ医に報告するよう指導しましょう。
酸素吸入方法は、退院前に必ず確認すべき事項です。吸入機器の特性を確認し、どのように取り扱うのかを説明します。自宅内に設置する酸素濃縮器と携帯型酸素ボンベがありますが、それぞれ、常に一定の酸素量が流れる連続式と吸気に同調して酸素が流れる同調式があります。
同調式はボンベ内の残量を節約できるのが特徴。外出の際は、同調式に設定することが多いです。鼻からの吸気がトリガーとなって酸素が送り込まれる仕組みのため、口呼吸だと酸素が送り込まれないことがあります。本人は酸素を吸入しているつもりでも実際は吸えていないということも起こり得るため、吸入パターンの確認が必須。適切な吸入方法の指導が大切です。
在宅酸素療法では、酸素投与量を設定する必要があります。投与量の決定時は、安静時と運動時など、状況に合わせた投与量を設定しなければいけません。必要以上に酸素を投与してしまうと、呼吸中枢が抑制されて、CO2ナルコーシスになる危険があります。ボンベの酸素量の減少スピードも上がり、外出時には残量が早くなくなってしまうかもしれません。必要最低限の酸素量を見極めるためには、運動中のSpO2の評価が重要です。
酸素流量を決める際に目安にしたいのは、患者さんの活動範囲です。たとえば、「6分間歩行で200m歩くとSpO2が80%まで低下する、酸素を2Lから4Lにアップすると90%維持ができる」というケースにおいて、患者さんの活動範囲が少ない場合は、SpO2を高く維持するために運動時4Lと決定する必要がありません。ほとんど家で過ごし、外に出ても100m程度という活動範囲なら、2L吸入下で100m歩行後も90%以上維持できるのであれば、運動時2Lという評価が妥当です。屋外での活動が多いなら、2L吸入下で動ける範囲がどの程度かを評価する必要があります。
1.TEIJIN(慢性呼吸不全への在宅酸素療法)
2.(pdf)一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会(酸素療法マニュアル)
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