ここでは、ホスピタルアートの概要や目的、ホスピタルアートを活用したリハビリ病棟の事例を紹介しています。
ホスピタルアートは、院内で取り組む芸術活動です。具体的には、絵画や音楽、パフォーマンスなどの創作・展示・発表などを指します。取り組む主体は、医療機関のスタッフ、ボランティア、患者などです。リハビリテーションで取り組む芸術活動も、ホスピタルアートに含まれます。
ホスピタルアートに似た言葉として、ヘルスケアアートが挙げられます。主な違いは、芸術活動に取り組む場所です。ヘルスケアアートは、福祉施設で行う芸術活動も含みます。
ホスピタルアートの主な目的は、以下のとおりです。
ホスピタルアートの具体例は、院内に絵画を展示して生活に彩りを加える活動やアート制作に取り組み自分を表現できる機会をつくる活動などです。これらの取り組みにより、病気の苦しみからアートへと患者の視点を移せる効果も期待できます。
2019年に WHO(世界保健機関)が発表した報告書では、健康と福祉の向上における芸術の役割を「従来の医療では課題を抱える生涯にわたる病気の予防、健康の促進、病気の管理と治療について新たな役割を提供する」と評価しています。900件以上の研究結果をレビューした報告です。
また、アメリカのクリーブランド・クリニックが実施した調査では、院内のアートに気づいた826人のうち73%が「気分がやや、または大幅に改善した」、61%が「ストレスがある程度、または大幅に軽減された」と回答しています。
徳島県小松島市にある小松島病院のリハビリ訓練室前廊下には、「徳島大ホスピタルアートラボ:THAL」がマスキングテープで制作したアート作品が展示されています。梅雨から夏までの時間をかけて制作した点が特徴で、完成した作品はもちろん、少しずつ色鮮やかになっていく壁面の様子をホスピタルアートとして活用しました。
京都協立病院のリハビリテーション課では、さまざまなテーマを設定しながら、壁面にアート作品を展示しています。一例として挙げられるアート作品は、「降り積もる雪と雪だるま」をテーマにした展示です。患者に少しでも元気になってもらうために、さまざまな表情の雪だるま(絵)を作って壁面に貼り付けました。
また「車窓から見える景色」をテーマにした展示も、ホスピタルアートとして見逃せません。新型コロナウィルス感染症の流行で、気軽に外出できない患者に外出気分を味わってもらうために、福知山や綾部、京丹波などで撮影した写真を展示しました。本事例は、手作りでもホスピタルアートに取り組めることを示しています。
ホスピタルアートは、心地よい環境を整備したり、患者の意欲を引き出したりするために、院内で取り組む芸術活動です。アートには、ストレスを軽減する働きなどを期待できます。国内でも、いくつもの病院が取り組みを始めています。リハビリ病棟の課題にアプローチする手段として、ホスピタルアートの実施を検討してみてはいかがでしょうか。
リハビリ病棟の課題について理解を深めたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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